1.発達障害児の同時総合機構と継次総合機構に関する心理学的研究 (1)自閉症児:自閉症児に共通に見られた特徴は、言語活動の水準に著しい困難性を示した点である。これは同時総合・継次総合の両課題で共通していたが、とりわけ同時総合課題における空間・関係・比較の各概念に関係する問題の成績が低かった。(2)学習障害児:同時総合課題の中の言語活動水準に関係する問題(空間・関係・比較の概念)の成績が著しく低かった。また、同時総合課題の中の感覚運動的水準の問題である立体図形模写課題において各要素は描けているにもかかわらず、立体として総合できていない点が特徴的であった。(3)精神遅滞児:同時総合・継次総合の両課題にわたって全般に成績は低いが、中でもとくに記憶水準の問題(図形系列の記憶再認と数系列の復唱)で低かった。 2.発達障害児の同時総合機構と継次総合機構に関する生理学的研究 本研究では自閉症児と精神遅滞児について閉眼安静時の脳波の周波数分析(オ-トパワスペクトル)と言語音意味弁別課題(言語活動水準)における事象関連電位の分析により検討した。(1)周波数分析:自閉症児の結果は個人差が大きく、健常児と同様に10Hz前後に鋭い単峰性の優勢成分を示す者がいる一方で、多くの周波数にわたって成分が散在するブロ-ドな波形を呈する者がいた。後者は脳発達の遅れを示唆している。精神遅滞児はいずれも軽度であったため健常児と大差のない結果を示した。(2)事象関連電位:健常児と精神遅滞児では言語の意味弁別に関連してN400成分が著明に出現したが、自閉症児ではこの成分は出現しなかった。これは自閉症児の言語活動水準に何らかの障害があることを示唆しており、前述の心理学的研究の結果とも一致している。
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