研究概要 |
平成2年度においては平成元年度の研究成果を踏まえて,実験と調査を中心とした研究を行った.得られた知見をまとめると以下のようになる.(1)平成元年度で選定した課題を用いて継続的な訓練実験を行った.(1)学習者の認知的プランニングと弛緩スキルとの対応関係、(2)弛緩スキル獲得プロセスの時系列特性、を明らかにするために、個人デ-タを重視した分析を行った.大学生10名を被験者として、野口体操を素材にした10日間の訓練実験を行った.デ-タの一次処理の結果から,動きのスム-ズさと筋電図で測定した筋緊張とが対応すること,学習者の認知的プランニングが訓練とともに質的に変化すること,及び学習は漸進的というより,むしろ悉無的に生じることなどが確かめられた.現在動きのスム-ズさをどのように数量化するかについて検討を加えており,それが達成されれば,それを学習者に呈示しながらの訓練実験が可能になると期待される.デ-タ処理用ワ-クステ-ションの学内イ-サネット網への接続が可能になったので,それを用いたデ-タ処理を現在継続している.(2)リラクセィションの測定に関って,動きよりもミクロなアプロ-チとして,呼吸活動とリラクセィションとの関係を検討した.我々のもつ経験的知識を実験的に検証しようとする試みである.ストレスと呼吸という逆の視点から,リラクセィション状態における呼吸を浮彫りにしようとした.その結果,呼吸後ポ-ズ時間という指標がリラクセィションを反映する可能性が示唆された.(3)リラクセィションの概念には専門家の中でも混乱が認められる.Drowsy状態をリラクセィションとする研究者もあれば,それを否定する者もいる.こうした概念の混乱は専門家だけで生じているのであろうか。この疑問に答えるために,質問紙による調査を実行した.調査結果は概念の混乱が非専門家の中にも存在するという興味ある事実を示した.
|