研究概要 |
リラクセィションは心理学における重要な問題でありながら、臨床研究に比較して基礎研究が充分になされていないという現況にある。その主たる原因のひとつにリラクセィションスキルの獲得プロセスを実験的に追跡する研究方法が確立していないことが挙げられる.換言すれば,リラクセィションの心理学的測定方法が確立すれば,臨床研究を支援する基礎研究が今後精力的に行われることが期待できる.本研究は以上の問題意識からリラクセィションの測定法を3つの角度から検討を加えた.(1)これまで基礎研究が用いてきたリラクセィション課題は学習者の覚醒レベルを低下させ,しかも学習者がプランや方略を表出しにくいという問題がある.これを解消するために身体の動きを用いたリラクセイション課題を取り上げた.その結果,訓練とともに身体の動きに滑らかさが増大し,かつそれに伴い学習者の認知的方略も質的な収束を示すことを確認した.これまで取上げられなかった動きによるリラクセィション測定の有効性を示唆する結果である.(2)動きよりもミクロなアプロ-チとして,呼吸活動とリラクセィションとの関係を検討した.我々のもつ経験的知識を実験的に検証しようとする試みである.ストレスと呼吸という逆の視点から,リラクセィション状態における呼吸を浮彫りにしようとした.その結果,呼気後ポ-ズ時間という指標がリラクセィションを反映する可能性が示唆された.(3)リラクセィションの概念には専門家の中でも混乱が認められる。Drowsy状態をリラクセィションとする研究者もあれば,それを否定する者もいる。こうした概念の混乱は専門家だけで生じているのであろうか。この疑問に答えるために,質問紙による調査を実行した.調査結果は概念の混乱が非専門家の中にも存在するという興味ある事実を示した.以上の研究成果をもとに,今後も獲得プロセスを明らかにするための研究を継続していく予定である.
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