本研究の目的は、社会的に重要な実際的意味を持つ非言語コミュニケ-ションの対人行動に及ぼす効果を検討することにある。研究は主として2つの部分から成る。 第1は、欺まんに関する研究である。嘘をつくには、隠ぺいと偽装のいずれかが試みられる。その内容が虚言者の意志に反して洩れ出す漏洩の手がかりである場合もあるが、多くは、隠されている情報内容は明示されないものの、欺まんが行われていることを示す欺まんの手がかりとして、NV行動に示されるのである。虚偽の陳述と真実を述べる場面が設定され、そうしたNV手がかりが分析された。結果から、欺まん課題に関連する各NV手がかり、すなわち反応潜時、発言時間、休止時間において、有意差が検出された。対人的手がかりに関しては、スマイルを除いて、うなずき、首ひねり、その他の動作に有意差は見られなかった。また、多少の性差も見られた。 第2は、援助場面での非言語コミュニケ-ションの効果に関する研究である。従来、援助を要請された者の示すNV手がかりから、被要請者の意思決定過程を捉えようとするアプロ-チは、非言語コミュニケ-ションの研究領域のものであった。そこで本研究では援助行動の方向からこの問題について接近を試みる。実験は、集団内での援助生起過程を明かにし、あわせて援助行動におけるNV行動の働きを検証することを目的として計画された。実験では、作業中に他者から道案内を乞われた被験者のNV手がかりがVTRによって記録された。分析の結果、被験者のNV手がかり、特に視線行動が援助行動に及ぼす効果については、要請者を見る頻度の多い被験者ほど援助を提供しないという結果が見いだされた。結果は、援助生起までの時間と関連づけて考察された。
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