研究課題/領域番号 |
01510070
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
吉田 甫 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (80094085)
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研究分担者 |
衛藤 俊士 宮崎大学, 教育学部, 教諭
栗山 和広 宮崎女子短期大学, 助教授 (10170094)
宇田 廣文 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (50040994)
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キーワード | 誤り方略 / 知識構造 / 分数概念 / 知識の表象 |
研究概要 |
本年は、児童が分数を学習する初年度であった。目的としては、初めて分数という単元を学習することによって、彼らの知識にどのような変化が生じるかを検討することである。そのための手続きとしては、彼らが分数を学習する以前の知識の状態を調べ、それに基づいて担任教師と話し合って分数単元の指導の方針を確定する。単元の指導が終了した時点で事後テストを行ない、さらに特徴的な方略をもっている子どもを対象にした個別の面接をおこなうというものである。 事前テストは、3年生はまだ分数は未習なので、分数については整数形式で調べられた。問題の例としては、「邦子さんが1このケ-キをもっています。これを3人で分けるときと5人で分けるときには、1人分はどちらが多いでしょう」というものであった。事後テストでは、大小関係については3つの分数の大きさの並べかえ課題を用いた。さらに、全体としての1の概念、等分割、計算などの能力も検討された。面接では、特徴的な子どもが方略の背後にどのような知識をもっているかを追求した。 以下のような結果が得られた。(1)分数を学習する以前では、89%の児童が分数についての正しい理解をしている群として分類された。もちろん、彼らの知識は、informalなものであるのだが、このようなレディネスにあれば分数単元の学習は易しいものと期待された。 (2)およそ3週間にわたる分数単元の後の事後テストでは、正しく分数の大小関係を理解していた群は、63%に低下していた。つまり、formalな知識を学習することによってinformalな正しい知識に基づいた児童の理解に単元の指導が妨害的な影響を与えたといえる。誤った理解の中でもっとも主要なものは、ル-ルBと呼ぶもので、これは異分母-同分子の分数の大小を比較する状況で現われる。つまり、分母の大きい分数が分数の大きさも大きいとする方略である。この方略をもつ児童が全体の39%にも達していた。さらに、全体としての1の概念や等分割などにも、きわめて特徴的な誤った方略が見いだされた。 (3)面接の結果、そうしたル-ルBをもつ児童は、分数の大きさを比較するという状況にも関わらず、比較のための知識は、新しく学習した分数の知識ではなく、彼らの既有知識からでていることが判明した。つまり、10進法に基づく整数の知識にしたがっていたのである。
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