4頭のアカゲザルを用い、餌強化による2レバ-選択事態で皮下投与したethyl βーcarbolineー3ーcarboxylate(βCCE)と生理食塩液の弁別を形成した。βCCEの用量効果関係に関する実験では、訓練用量が低いとより低用量で効果が発現することがわかった。般化テストでは5HT_<1A>アゴニストの8ーOHDPATおよび5HT_<1B>アゴニストのTFMPPについて完全般化がみられた。5HT_<1B>受容体は囓歯類でのみ見いだされており、従ってサルでは両サブタイプの区別がない可能性が考えられた。一方5HT2およびD2アンタゴニスト作用を有するスピペロン、D1アゴニストのSch23390、ニコチンおよびジアゼパムでは明らかな般化はみられなかった。また、D2に比較的選択性の高いハロペリド-ルでは部分般化がみられた。拮抗テストでは、0.18mg/kgのβ CCE投与後にジアゼパムを累積用量で与えたところ、ジアゼパム0.18あるいは10mg/kgでβーCCEの効果が消失した。ジアゼパム1mg/kgあるいはフルマゼニル0.1mg/kg前処置後にβCCEを累積用量で与えたところ、βCCEの用量効果曲線は右に0.25ないし0.75ログユニットシフトし、競合的な拮抗がみられた。Sch23390やTFMPPの前処置では、TFMPP前処置後3頭中1頭で拮抗がみられた他は、β CCEの効果に影響はみられなかった。ジアゼパム前処置後にβーCCEに完全般化のみられた8ーOHDPATの累積用量を与えたところ、βCCE反応は見られなくなったが、高用量では反応が抑制され、拮抗は非競合的であった。一方フルマゼニル前処置では8ーOHDPATの般化に影響はみられなかった。 以上のことから、アカゲザルにおけるβCCEの弁別刺激効果はヒト不安のある側面を代表すること、第一次作用点が中枢のベンゾジアゼピン受容体であることは疑いないが、効果発現にはセロトニン作動性神経系のうちでは5HT_<1A>受容体が関与しており、またドパミン作動性神経系ではD1よりもD2受容体がより深く関与していることが示唆された。
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