真野は、若年層の地区流出により高齢化が急速に進み、特に女性の一人暮らし老人世帯の比率が高くなっているとともに、50年以上たつ長屋住宅が多く、その老朽化が進み、インナ-シティの問題を抱えている。神戸市との協定にもとづく住民の内発的な「まちづくり」が進められており、最大の課題は長屋の共同建替えと道路拡幅の推進である。リ-ダ-層の論理と地区計画にかかるフォロア-層の対応の論理とを抽出するため事例調査を進めてきており、リ-ダ-層への面接をほぼ終了し、フォロア-層の一部にも手をつけている。現段階で得られた知見は、(1)リ-ダ-層の間でいちばん根底にある論理のぶつかりあいは、地域福祉をどう見るかという点であり、開発のためのまちづくりと弱者のためのまちづくりとのふたつの方向として現れてくる。(2)フォロア-層のなかからは、特に年金で暮らしているお年寄りを中心とした弱い立場のものを救う論理を見いだすことが、現在まちづくりの直面している最大の課題であることが、うきぼりになりつつある。(3)将来子供家庭と地域の中で同居する志向をもつ層がまちづくりに強い関心をもっている。(4)フォロア-層の中のまちづくりにのれないグル-プを規定している条件として、経済的なファクタ-のみならず、近隣づきあいを中心とする人間関係と家族周期のふたつ要素が大きく介在している点が、明らかになりつつある。(5)まちづくりを推進している母体である自治会組織のもつ論理と、対応をせまられているフォロア-層の生活者の論理とが、充分に整合しない形で運動が進められてきているが、地域がふたつの自治会連合に分かれて対立する中で、地域一本の形で結成されていた同志会(壮年会)のメンバ-が、自治会組織の役員層に参入してきており、彼らのインフォ-マルなネットワ-クが、自治会のフォ-マルな対立を超えて、まちづくりを実質的に支えるという新たな状況が生じてきている。
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