真野は、インナ-シティの諸問題を抱える中で、地区の再生にむけて、神戸市との協定にもとづく住民の内発的な「まちづくり」を進めてきているが、研究課題である真野の住民の住民運動と住民意識の関係に関して実証的に得られた知見は、以下のような諸点である。(1)運動をひっぱっているリ-ダ-層の中にも、開発のための「まちづくり」と社会的弱者の福祉のための「まちづくり」のふたつの間でコンフリクトがあり、コミュニティ意識モデルでいうと共同体型意識とコミュニティ型意識のものが混じりあっている。(2)「まちづくり」の事業に対応を迫られているフォロア-層の住民たちの選択は、職業、年齢とあととりの状況(家族周期)、持ち家・借家という三つの客観的条件で規定されてくる。(3)フォロア-層の中でまちづくりに積極的に関わろうとする者は、地域の役職を多く引き受け、地域活動を通しての地域の友人が多いという特微を共通にもっている。(4)共同体型とコミュニティ型の意識は、「まちづくり」に積極的に関わってゆく条件になり、地域活動を共にする親しい友人との人間関係の中からつくられてくる。他方、個我型と伝統的アノミ-型の意識は、地域活動のみならず地域の友人にも関わりをもたない傾向にある。(5)対応の選択過程は、客観的条件の他に、意識のもち方という主体的条件によって規定されており、この場合の意識は、地域の友人との人間関係の中からつくられてくる。(6)真野の中には、地域集団間のゆるい、開かれた連合の構造があり、この連合を実現する場が地域行事であるという構造がある。このゆるい連合の構造の中に、ハ-ド、ソフト両面にわたるまちづくりの活動の際の、地域組織間の役割分担がある。この役割分担の仕組みは、別々の目的で活動しているフォロア-層の活動をまちづくりへと統合しており、さまざまな意識を持つリ-ダ-層とフォロア-層とを接合させている。
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