研究概要 |
これまで企業逸脱と統制に関する主要な一般理論の批判的検討と医療組織を対象とする事例研究を行なってきた。これらを踏まえて本年度の研究では、企業内部の責任の帰属の問題および企業と環境との関連に焦定を定めて、企業逸脱の統制の方法として有効なものは何かについて考察した。その結果,一応次のような項目が注目すべき点として明らかになった。 1.プロフェッションが主体の組織体では,専門同僚間統制が主張されているが,自己統制は実質的には行なわれていない。それに対して官僚制的組織の内部統制と責任の帰属はプロフェッションのそれよりも明確であるが,組識の各レベルの長が、逸脱の非難の程度に応じて,名目的な責任を取ることが多い。 2.逸脱に関与した企業への外部環境からの統制としては,市場・世論・行政指導・法的制裁などが主なものとしてあげられる。企業が最も警戒しているのは世論による社会的非難である。しかし,この種の反作用は制御力としては持続性に乏しい。逆に法的制裁はその執行に時間がかかる。企業への的確な反応は市場においてあらわれるが、世論と同様に変化しやすい。わが国で従来から重視されてきた行政指導・介入がそれなりに有効な手段であるといえるが,それも企業側と癒着し,取り込まれる危険性がある。従って,どれか一つの有力な統制方法といったものはありえず,世論と行政指導とのタイアップのような方策が望ましいと暫定的にいえる。
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