1.研究期間中に参議院選挙が行なわれ、保守勢力と革新勢力との間に逆転現象が生じるという現象がみられた。従って「保守政治の長期一元的継続」という研究の前提には若干の変化が生起したわけだが、危機的な状況であっただけにかえってこれまでの長期間にわたる保守政治の問題点が鮮明化されやすく有意義な研究が行なわれたと言えよう。 2.研究は国会図書館、大宅荘一文庫、東京都立中央図書館、東京大学教養学部等における文献資料の調査研究に相当のウエイトを置いて進められた。とくに政治家の伝記的資料については、かつて国会図書館所蔵の目録が秀れたものとして広く研究者間に流布していたが、そこに欠落した多くの文献を発見することが出来、この方面の研究は未だに基本的な点で不十分さが残ることを痛感した。 3.文献研究を深めつつ、文献研究の限界を補完するためにも、本来の研究方法であるインタビュ-調査を実施した。ただ、研究期間中に衆参両議院とも選挙があり、前述のごとく保守党は危機的状況にあったため保守政治家は極めて多忙で、研究開始当時に期待していたほどの成果があがらなかったことは否定できない。しかし、この点は時期的にやむをえないであろう。 4.文献調査とインタビュ-調査で浮かび上ってきたのは保守政治家をとりまく政治文化の問題である。最も探究の困難な政治資金源の問題を考えるにしても、日本的贈答文化という政治文化的背景を明らかにせずにはその実態の解明は完璧にはできない。 5.従って以上の研究を通じて、ライフヒストリ-的保守政治研究の基礎を構築し、日本社会論を基盤にした日本的政治文化論への方向性が拓り開かれたといえよう。
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