研究課題/領域番号 |
01510111
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
社会学
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
河村 望 東京都立大学, 人文学部, 教授 (60086923)
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研究分担者 |
寺田 良一 都留文科大学, 文学部, 助教授 (00163923)
高橋 和宏 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (40117718)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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キーワード | 地域社会 / 近代化 / 伝統 / 脱工業化社会 / ポストモダン / 民間信仰 / 資本主義化 / 国家神道 |
研究概要 |
本研究でわれわれが直接に問題にしたのは、地域社会の近代化と伝統の関係である。これまで、近代化は、どの地域社会においても共通にみられる普追的過程とみなされてきた。そして、伝統とは、地域社会ごとに多様な結果をとるにせよ、全体としては伝統主義として、近代の合理主義の対極にあるものとみなされきた。本研究では、このようなステレオタイプ化された理解が否定され、地域社会の伝統と近代化を理解するのに有効な新しい視点が確立された。 ここで、近代化を資本主義化の過程としてとらえると、当然のことながら、合理的な金儲けが問題になる。わが国では、資本主義的生産様式は、国民の主体的意欲と無関係に、外から必然的に持ちこれたという大前提があり、国民は知らないうちに、いわゆる「歴史の必然」に尊かれて、不可避的に資本主義を選択したという非料学的信念がある。したがって、政府が外国から機械を購入し、工場を建てさえすれば、資本主義は自動的に確立すると根拠もなく想定されたのである。 だが、日本の資本主義も、たとえそれが西欧型の個人主義的原理のうちにたつものではないにせよ、資本主義であるかぎり、金儲けが不可欠の前提である。したがって、富国強兵をめざし、採算を度外視して経営された官営工場をこの範疇にいれるのは不可能であろう。こうして、きわめて安い、木とブリキを主とした器械、安い労仂力、安価なまゆ、安定した外国市場とあいまって、製糸業において「下から」資本主義化がおこなわれたのである。 そして、このような資本主義変化をささえたエトスは、いうまでもなく、プロテスタンティズムではなかった。それはまた、天皇制として制度化された国家神道ではなく、強いていえば「民間神道」であり、この地方でいえば、諏訪大社の神、御左口神信仰だったのである。
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