平成2年度の研究計画に沿って、現地調査及び資料収集とその整理を行った。現地調査は、第一に低自殺率地域の自殺者家族を対象に訪問面接調査、第二に対象地域の老人クラブ役員(一般老人)を対象に高齢者の生活実態調査(自殺老人の比較群として)、第三に高自殺率地域のうち3町村から12集落を抽出し、主婦を対象に生活意識調査をそれぞれ行った。また、高自殺地域の自殺者家族を対象にした余後調査の内容・方法について検討を行った。以上、本年度実施した三つの調査、及び前年度に行った調査(一部、それ以前から行ってきた調査を加えた)、その他の諸資料を加え、東京大学大型計算機により統計的処理を行った。以上の結果から得られた成果のうち主要な点は、次の通りである。 1.対象地域の自殺老人の家族的背景について、「家族生活の満足度」「親子の同別居」「老親の扶養責任」「相続」「家・屋敷の処理方法」「あととりの職業と人間像」「家族に対する期待や方針や将来に対する気持」「家族との気持の通じあい」等の変数で検討を行った結果、自殺老人(男女共)は、一般老人に比べ伝統的なイエ意識が根強いこと、それだけに自殺老人に見られる家長としての権威の強さと、孤立した実現への思い込み、そして葛藤状態は、やはり老年期の生き方として気になる点である。 2.老親と家族の双方が、それぞれ方針や期待と違ったことをした場合の対処の方法と受容・被受容関係の分析から、一般老人では家族との間で柔軟な対応が見られるのに対し、自殺老人では「絶対に許せない」「ともかく黙っていられない」等柔軟性に欠ける傾向が見られること、さらに前年度に指摘した家族との間の意識や価値観のズレや葛藤、家族集団からの孤立の問題等に関して実証的なデ-タ-が得られたこと。 その他、研究課題に関し多くの知見を得ているが、ここでは省略する。
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