研究概要 |
本年度は神社本庁副総長(D)岡本健治、曹洞宗宗議会議員(E)朝日泰峯、日本基督教団前世界宣教協力委員長(F)岩村信二の3師を取り上げた。神社本庁は7万9千余の神社を包括する神社神道系の巨大教団、曹洞宗は傘下に1万5千近い寺院を擁する既成仏教系の巨大教団、そして日本基督教団は1,500近い教会を包括するプロテスタント・キリスト教の代表的教団である。3師はそれぞれの教団において頗る重要な地位を占め、大きな影響力をもっている。 3師は所属教団の伝統を異にするのみならず、成育の背景の点で(E)朝日は農山村寺院の三男、(D)岡本は地方都市職工の長男、(F)岩村は大都市キリスト教会牧師の長男という差異があり、最終学歴も(E)(D)は(宗門立)大学専門部、(F)は官立大学大学院・米国大学大学院といった差異があるが、生年は(F)の1920(大正9)年、(E)の1922(大正11)年、(D)の1924(大正13)年3月、と隔たりが小さい。 3師が所属する教団では、宗教家としての職業的地位を子に世襲させる伝統が規範として成立しているわけではないが、その家系の伝統に由来する親の期待に添うて宗教家となった点では、3師とも軌を一にしている。宗教家としての人間形成については、(F)岩村は父、伯父、祖父母といった近親に、(E)朝日は大学専門部での師や先輩、道場での修業に、(D)岡本は職場での日常的訓練と上司先輩の感化に負うところが大きい。戦争体験は(E)と(F)では後遺症的インパクトをもち、自己にたいする倫理的要請をきびしいものにしているが、(F)では何のインパクトもなかったといってよい。
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