予定の2年間で、真宗大谷派元宗務総長・嶺藤亮(大正3年生、故人)、日本基督教団前世界宣教協力委員長・岩村信二(大正9年生)、金光教元教監・安田好三(大正10年生、故人)、曹洞宗宗議会議員・朝日泰峯(大正11年生)、立正佼成会理事長・長沼基之(大正12年生)神社本庁副総長・岡本健治(大正13年生)の6師の面接調査を実施し、つぎの諸点が明らかになった。(以下頭文字を用いて示す。) (1)家族・親族等のマイクロ環境の影響は、親の職業を嗣ぐ形で宗教家になった場合に顕著で、とくにMとIの場合、宗教家となる構えは少年期までに形成されたもののようである。両者ともにマイクロ環境の人物がアイデンティフィケ-ションの対象となっている。また、AもOも父の希望に添うて宗教家となったことは、マイクロ環境の道筋方向づけ機能を示唆している。 (2)中学校以上の学校や研修のための道場、あるいは職場といった比較的身近な環境、さらに数団という宗教家にとっての大環境は、ともに青年期以後に経験されるメソ環境であって、教団人の自己形成のために例外なく大きな意義をもつことが判明した。調査対象の6人は、いずれもメソ環境の挑戦に積極的に応戦することによって、宗教家そして教団リ-ダ-としての資質に磨きをかけた。 (3)戦争体験という過去のマクロ環境のいわば後遺症は、Y、A、O、Nに明瞭に現れている。この4人に共通するのは、職務にたいする滅私奉公的な姿勢であって、前3者の場合これを強く支えたのは生き残り者の負い目感であった。MとIは軍隊に入る前に独自の価値体系を体得していたので、戦争体験の影響は表層的なものに止まった。
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