研究概要 |
青少年期の対人関係の発達の観点から考えると、学校不適応つまり登校拒否は、学校における人的関わりを拒否しているという現象であり、いわゆる思春期危機の一つの現象である。このような危機にある青少年達が学校という場における、彼らの人格形成上重要な意味を持つ「意味ある他者」(significant others)である教師との断絶状態にあるとき、それに代わって彼らの生活において影響力を持つ人々が、地域の中やマスメディアを通じて接触する人物やキャラクタ-になっていることを明らかにした。 まず登校拒否に関する自己評価チェックリストの結果と教師評価による学校適応児童・生徒,不適応児童・生徒の評価点との相関を検討した結果、一応かなりの相関が見られたので、教師による学校適応,不適応の評価を受けた児童・生徒を対象に「人間的関わりに関する調査」との関係を検討した。その結果は、学校適応児童・生徒は家庭や地域の人々との人格形成上重要な人間的関わりを持っているにの対し、学校不適応とされた児童・生徒は家庭,学校,地域いずれの人物との関わりが希薄であり、それを補償するものとしてマスメディアを通じて(特に活動性の低い人々)との仮想的な関わりに逃避する傾向があることが明らかになった。 しかしその中でも、家族ではなくて親戚(おじ・おば・いとこ)、また地域の中では「医者・看護婦」「おまわりさん」「近所の店の人」等がいくつかの意味で意味ある他者、重要な他者となっていることが明らかになった。これらの意味ある他者は、親でもなくかといって他人でもない、いわば「社会的オジ」として位置づけられ、さらに社会的オジは四つの類型があり、それぞれの類型が持つ役割に相当する人物が親せきや地域に存在し、これらを組織することが問題解決に有効なことを実証した。
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