本年度は新たに対象児2名を加え、脳波変動を課題ごとに定量的に分析し、より客観的な検討を行った。知能障害と重度の発語障害を有する養護学校高等部女子生徒に種々の条件下で本の読み聞かせを行い、脳波のテレメ-タ-測定を実施した。その結果、対象児の読み慣れない本を速く読み聞かせると注意が低下し、故意に誤読を加えると注意が高まるなどの知見を得た。また視覚弁別課題の際の誘発電位の分析では、抽象的刺激よりも具体的刺激に中が向けられやすいことが示唆された。この生徒については、教材と指導方法の工夫により対象児の注意を統制し、学習効果をあげることが十分に可能と考えられる。同じく発語と知能の障害を有する高等部男子生徒に、縫製作業中にテレメ-タ-測定した。その結果、利き手でない右手の使用では、利き手である左手よりも緊張の高まること、また検査者の同席では同席しない場合よりも緊張の高まることが示された。この生徒は小学部の時から自閉傾向を示しており、対人関係に敏感であることが示された。また、視覚弁別課題では、すべて「ちがう」と回答しているのに、視覚誘発電位の分析により正しく弁別していることが示唆された。しかし、抽象的刺激の反復呈示に対しては注意配分の未熟性が示された。この生徒については、利き手を配慮した作業用教材・指導法の工夫、作業環境の配慮、教科学習における抽象的教材の作成・指導を工夫する必要があろう。本年度分の設備備品費で入手したデ-タレコ-ダ-を加えて、中学部女子生徒2名の縫製作業をテレメ-タ-2台で同時測定した。その結果、担当教師の言葉がけの与える効果が生徒によって異っており、その差異が脳波変動の違いとして示された。今後、複数の児童・生徒を対象とする脳波同時測定を続行し、個人差に応じた教材・学習指導法の開発方法を検討する予定である。
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