本研究は、慢性疾患をもつ児童・生徒、不登校の児童・生徒、およびその親が、長期入院中の病院や養護学校、あるいは家庭などにおいて、どのような問題を抱えているかを、米国における法制・実態をも参照しつつ、主に面接調査・観察により明かにすることを目的とした。 上記の研究目的を達成するために、本研究では、主として長野県若槻養護学校、長野県精神保健センタ-、日赤長野病院、長野県茅野市塚田医院などの協力のもとに、子ども自身による病いの認識状況、病いをもつ子どもへの周囲の対応、生活・学習上の不安や問題点といった諸点について面接・観察を行なった。収集された膨大な資料の分析は現在続行中であるが現段階までに明らかにされたのは次の諸点である。 1.全体として、病いをもつ子どもの生活・学習をト-タルに捉える視点が病院、養護学校ともに確率されているとは言い難い。「病い」が子どもの自我形成に果たす意味の人間学的な探究が必要である。 2.一般病院では学習室の不備、スタッフの不足による学習施設の遊休化が見られ、他方養護学校では「病い」を学習の中核に捉えつつ自己形成を図っていくといった教育活動が十分に展開されていない。病院と教育機関の連携を一層進めるとともに、病院における専門スタッフやボランティアの導入を積極的に図ることが必要である。 3.「登校拒否」の生徒への対応は、現在、各種相談期間、病院、養護学校などで行なわれているが、それらの機関の連携、協議が必要である。とくに「不登校」の子どもに係わるスタッフ(カウンセラ-、教師、ポランティア、学生等)の多様性を促進することが不可欠である。このことは、「相談学級」の設置に際しても同様である。 4.今後、平成2年度における在外研究の機会を利用して、米国における実態をも調査し、本研究のテ-マを継続的に追求する予定である。
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