本調査は、教育政策の形成・実施過程における政治アクタ-の一つとして、都道府県・政令指定都市の文教担当議員に着目し、どの様な意識を持ってどの様な活動をし、どういった役割を担っているのか、その実態を明らかにしようとしたものであった。 まず、議員の意識の面では、活動意欲の高さが窺える。またかなり高い関心を寄せているものの、低い実際の活動に結びつかない傾向がある。議員は、教育政策の形成・実施の過程においては、主役ではないが、教育政策に高い関心を持ったアクタ-として準主役的な位置にあるのではないか、という仮説的結論を導き出すことができる。 政策特性に着目して分析してみると、中央レベルの政策では、地方の裁量範囲が広いことが、議員が活動する条件の一つとみることができる。都道府県・政令指定都市レベルの政策でみるならば、予算が絡む政策、行政当局間の調整を必要のある政策では、関心も高く、活発に活動し、影響力も強いと認識している議員が多い。他のアクタ-との関係でみるならば、常に住民の存在を念頭におきながら、教育政策に関わり、政策形成・実施の当事者と住民とのパイプ的役割を担っているといえよう。また各都道府県・政令指定都市の政治状況、すなわち議員の所属政党の勢力分布状況と議員の活動様式との関係を見るならば、自民党・保守系議員の多い地方議会の方が、相対的に活発ではない傾向がみられた。 このように、先行研究では分析の対象として取り上げられてこなかった議員が、実は教育政策の形成・実施過程において一定の役割を持ち、影響を及ぼしている、ということを仮説的ではあるが明らかにすることができた。
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