本研究は、高校改革の有力なモデルとし考えられる総合選択制高校を現状評価するとともに、その構成原理の可能性を確かめ、これを軸に高校改革モデルを構築しようとするものである。代表的事例校3校を中心とする現地調査を継続的に行った結果、次の知見を得ることができた。 1.事例校3校は、(1)普通科総合選択型、(2)職業学科総合型、(3)普通科・職業科総合型と編成形態が異なり、入学者の学力、進路などにも違いがみられる。けれども、各校とも厳しい学校格差体系のなかで上位校に近い中堅校としての位置をしめており、生徒及び教師は総じて肯定的な学校評価を行っており、多方面にわたる教育活動が相乗して教育効果を上げている。 2.この現状評価からして、総合選択制高校の構成原理のうち、(1)特色ある多種の学科・類型・学系の設置と相互乗り入れ、(2)大幅な選択制、特に自由選択制の導入、(3)普通教育と職業教育の総合化は基本的に普及徹底する方向で深められる必要がある。 3.総合選択制高校の理念・目標としての教育の多様化・個性化派、従来の高校と比べれば格段に改善されている。けれども、生徒の学科・類型・学系選択が進学準備教育の効率化に矮小化される傾向が、岡山県では顕著にみられる。この点は、高校の教育の目的原理としての(1)全人教育、(2)進学準備教育、(3)職業教育・専門教育・の関係構造を理論的に解明するなかで、あり得る高校像を追求していくべきである。 4.代表的事例校の現状評価の方法として、本研究では各高校のインプット-アウトプット関係を中心に考察を進めてきた。これに加えて、各高校のスル-プットを時系列的追跡研究が可能となれば、さらに精緻な研究が可能となる。今後の課題である。
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