本研究は、筆者が従来行なってきた海外日本人子女の教育に関する研究成果にのっとって、在日外国人子女が日本という異文化の中でどのように生活し、日本文化と接触し、さらに母国文化を保持しているか、また、彼らのアイデンティティ-の問題はどうなっているかということを明らかにし、もう一度「国際化」という観点から海外子女教育をグロ-バルに考察しようとしたものである。本年度は在日外国人学校のなかでも主としてヨ-ロッパ諸国を母体とするものを中心とし、フランス人学校(東京都)、スウェ-デン人学校(静岡県)、フィンランド人学校(大津市)、ノルウェ-人学校(神戸市)の4校の協力を得て調査研究を行なった。 基礎資料収集段階で各学校の校長とインタビュ-を行い、4校の特性にかなりのちがいがあることを確認した。そこで、その違いを反映した形でそれぞれの学校用にアンケ-ト調査票を作成し、児童生徒ならびにその父母を対象としてこれを実施した。更にこのアンケ-ト調査分析結果の理解を深める目的で、各学校の教師・運営委員・児童生徒・父母等に会い、彼らの経験や考えを聞くためのインタビュ-を行なった。以上の調査から、小規模ながら非常に民族色の濃い教育を行なうケ-ス、民族色は同様に濃いが同時に日本の地元にその根をかなり張った教育を行なうケ-ス、さらに旧植民地出身者も含めてやや広い意味での民族教育を行なっているケ-スなど、非常に興味深い示唆を得ることができたので、近日中に学会や雑誌上でこれを発表していく予定である。 今後これを発展させて、アジア諸国を母体とする外国人学校の場合、更に、民族教育というより実際にはむしろ国際学校として国際人教育をする役割を担っているアメリカンスク-ル、インタ-ナショナルスク-ル等に重点を移して研究をすることが、海外日本人子女教育の将来のあり方を考察するには必須と思われる。
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