本研究を1年で遂行するため、旧制大学への女子入学の全体像を視野におきながらも、特に嚆矢としての東北帝国大学(大正2年)の事例の詳細な把握やその歴史的意義の究明に焦点を絞って研究を進めた。資料調査は、国立国会図書館・国立公文書館・東京都公文書館及び北海道大学・東北大学・名古屋大学・九州大学・早稲田大学・明治大学・慶応義塾大学等で行った。研究実施計画として4項目を設定したが、この作業として、(1)女子大学教育に関する行政資料については、国立公文書館所蔵の文書により女子入学資格規定に対する文部省の基準判定資料の調査・収集及び『帝国議会議事録』・『公文雑纂』により帝国議会における女子大学教育論議・請願関係資料の調査を行い、必要部分を複写した。(2)個別大学所蔵資料については、上記6大学で、公文書・教授会議事録・大学新聞等の資料を調査・収集した(この他広島大学・法政大学については手紙等で調査した)。(3)女子学生・生徒の在学状況については、『文部省年報』により女子学生数の全体を把握するとともに、特に大正2年東北帝国大学に入学した女性の学歴・経歴・研究業績等を調査した。(4)女子入学に関する理論・意見については、国立国会図書館等において単行本・新聞・雑誌等を調査し、東北帝国大学初代総長沢柳政太郎の女子高等教育意見を網羅的に収集し、また大正2年の女子入学をめぐる教育関係者の意見や新聞論調等を調査した。このような作業に基づいて収集した資料については、切り抜き帳にまとめるなどの形で整理した。このような研究成果の一部を『旧制大学の女子入学に関する基礎的資料-東北帝国大学の事例を中心として-』(資料及び解題)としてまとめ、印刷物にした(4月末日刊行予定)。今後も、個別大学所蔵の公文書及び女子学生の在学状況を中心とした資料の収集を進め、戦前における女子大学教育の制度的確立の方向性とその歴史的特質を究明して行きたい。
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