研究概要 |
本研究は、子どもの自己実現に最適の知育のあり方を探究するため、アメリカ合衆国の主要な教育哲学を比較研究することを目ざした。具体的には、進歩主義,論理経験主義、改造主義、実存主義,伝統主義の知育論の特色を検討した。進歩主義については、「進歩主義教育の知育論」と題して椙山女学園大学研究論集第21号(1990年)で発表した。ここでは、進歩主義の知育論が、子どもへの迎合教育ではなくて、成長を究極的価値として子どもの発達、興味、教師の指導性、教材の組織化を科学的に究明する立場であることを明らかにしている。したがって、道徳的価値を科学的探究の領域外にあると主張する論理経験主義とは立場を異にしている。改造主義に関しては、「改造主義教育」及び「ブラメルド,T.」と題して『新教育学大時点』(第一法規,1990年)で,また「改造主義」と題して平光昭久・甲斐進一論『教育の本質と目標』で発表した。改造主義は進歩主義に多くの点で共鳴しながらも、文化改造の教育の角度からの知育論の確立に関心を示している。改造主義の知育論の鍵概念は、社会的自己実現を目ざした合意的確認の方法である。合意的確認とは、社会的自己実現の内実を科学的、学際的研究によって解明するとともに、それが多数者の理解、合意が得られることを重視するものである。実存主義に関しては「実存主義」と題して前掲の『教育の本質と目標』で発表した。ここでは主体的知的、創造的知性の育成の重要性を論じた。伝統主義に関しては、「創造的思考」、「直観的思考」と題して発表した。ここでは、ブル-ナ-の発見学習が、これらの思考の育成に貢献することを明らかにした。また、創造的思考は無からではなくても経験の深化と拡大によって生まれること、直観的思考は、幼い子どもにも、最先端の学問領域の学者にも有益な武器となることを明らかにした。
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