親は公教育制度の全体構造のなかでいかなる位置を占め、その子の学校教育についてどのような権利を有しているのか。この問題は公教育法制の基本構造にふれる問題だと見られるが、わが国においてはこれについての法制は著しく不備であるし、研究もほとんどなされていない状況にある。本研究は、この領域の教育法制が既にかなりの整備を見ているドイツとの比較において、(1)親の教育権の法的構造、(2)親の公教育運営への参加制度とその運用実態を、理論的・実証的に分析・検討し、学校教育における親の法的地位の明解化とその制度的現実化のための法制論を構築しようとするものであり、以下のような研究を行った。 1)親の教育権の法制史的考察 親の教育権の法制史をロ-マ法から現代法に至るまで実証的に把握した。そして特に明治憲法下における親の教育権の法的構造を、就学義務、国家の学校教育独占、教育の自由、公法上の特別権力関係論等との関係で検討し、明らかにした。 2)親の教育権の法的構造に関する比較法制的考察 現行法制下における親の教育権について、その法的性質・内容、国の教育権能や学校の教育権限との関係、公教育法制における位置づけなどについて、わが国とドイツの教育法制・学説・判例を検討し、考察した. 3)ドイツの父母会の法的構造に関する調査研究 ドイツ各州の学校参加法、父母会の組織・運営に関する法律、学校父母会規程など各種の親の教育参加関係法を収集し、分析した.また各州の文部省、州・県父母会、校長会、教員組合、研究者に質問紙を郵送して、親の教育参加の法的構造と運用実態・課題等について調査し、分析した。 4)わが国のPTAの制度現実に関する調査研究 日本PTA全国協議会、全国PTA問題研究会を訪問し、親の教育権との関連で、PTAの制度現実と課題についてヒアリングを実施した。
|