本年度は、昨年度に引き続して、中国の大学設置や運営に関連した法令や通達を広く収集、翻訳し、分析、検討する作業を行った。本年度新たに入手し、翻訳した法令には、主なものとした、「高等教育機関の基本建設の管理責任に関する暫定規則」「一般高等教育機関の校舎面積基準」「高等教育機関の財務管理改革実施規則」などが含まれ、これらは大学の設置・運営形態を具体的に理解する上で、欠くことのできないものであることが分かった。また、法規のような基本資料すら、わが国では邦文で利用可能なものがほとんどない状態に鑑み、本研究の運程で入手、翻訳したものを整理して、『中国高等教育関係法規(解説を正文)』の一冊にまとめ刊行した。これによって、中国の大学の設置や運営の形態の現状については、かなり詳細に、かつ全面的に把握することができるようになったと思われる。 本年度はさらに、中国の大学設置形態の原型が形成された建国初期の状況を明らかにするため、昨年に続いて当時の新聞、雑誌、中国政府刊行資料に掲載された関連の記事、論説の分析を行い、この成果の一部として、「50年代初期中国における大学の再編成」と題する論文を発展した。この論文では、1952、53年に全国的規模で実施された大学組織の再編成の過程を詳細に跡づけするとともに、中華人民共和国の建国前後から既に行われていた個別大学の改組と前者との連続性、非連続性を解明した。この他、本研究課題に間接的に関わるものとして、中国における海外留学の問題ならびにわが国への留学の評価に関する検討を行い、「中国から見た日本留学」と題する論文にまとめた。
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