本研究の対象児である一卵性双生児二人について、各自の自閉症状と精神遅滞の程度、作業能力を特定するため、作業学習の様子を観察し、かつ、VTRに収録し、分析した。分析要因の同定については、作業能力検査や作業態度・集中力チェックリストの結果からもカテゴリ-別に検討した。 各作業集団における対象児の作業能力や特徴から考察した結果、精神薄弱養護学校における自閉症状を伴う重度精神遅滞児の進路指導の一分野として、以下の知見を学級担任に提示することができた。 1.自閉症状を伴う重度精神遅滞児に一定の作業内容を理解させるためには、作業過程が明確であること、3〜4種の簡単な作業を繰り返す内容であること、身体全体を使う作業種よりは指先での細かい作業内容を好むこと、同じ指導者が一対一でつくこと等が明らかになった。 2.作業種については、原材料や製品の搬出のような行動範囲の広い作業種よりは、着席して机上でする仕事がより集中しやすいこと、全く違う素材の組み合わせや袋詰めであること、できた製品を10〜50に束ねて成就感の得やすいものであること等を同定することができた。 3.教師側の変数である、発問や指示・課題の指示のしかたとして、最初は、モデルを提示し、徐々にモデルや動作をフェイドアウトしていくこと、また、課題の与え方・難易度・経験の有無等が不適応行動の生起に深い関わりのあることが明確になった。 4.作業における行動の自立、意思決定、自己評価、自立性について基礎デ-タを得、参考資料として実践に生かすことができた。 今後は、作業特質分析を通して、情緒反応の様子、相互交渉、コミュニケ-ション行動の検討をすることが残された課題である。
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