本デ-タベ-スが保有する潜在的な理論的貢献能力を実証する目的で、カ-スト別「観光産業就業率」の精密な分析を試みた。その結果は、高カ-スト及び低カ-ストの低率並びにマトワリ・カ-ストの著しい高就業率が明瞭になり、ポカラ観光産業の特徴を見亊に実証することが出来た(参照:石森1991の山本論文)。更に、本年度は土地所有デ-タの基礎集計も完成した。その結果、ポカラ居住民における家族別の「富の遍在」を数量的に把握することが可能になった。発展途上国の都市住民における経済的不平等性を実証するデ-タが階無の現在、我々の成果(参照:山本・北村1991)は貴重となるであろう。 家族構造の分析に関しては、tree構造のタイポロジ-による分類化を試行したが、デ-タ数が多量すぎてパソコンでは処理しきれない。この目的の為には大型電算機を使用した「化学構造」の分析例にヒントを得た新しいコンピュ-タ利用方法が必要であろうと思われる。現在の研究環境においては、我々のデ-タベ-ス内で使用されている記述情報を利用した理念的なタイポロジ-を仮説的に構築して、そのタイポロジ-を比較軸として使用した家族構造や婚姻形態に関する通カ-スト比較分析を現在も継続中である。その結果、ネパ-ル(おそらく南アジア)の家族構造・婚姻形態の特徴として、(1)ポリガミ-、(2)通カ-スト結婚、(3)「ジュマ」(宗教的未婚者)、(4)出戻り娘、(5)出稼ぎ者が重要であることは判明しているので、これらを全家族数の中で発生率を把握するとともに、各々の現象にどのようなバリエ-ションがあるのかを正確に把握する作業を現在も継続中である。この結果は、来年度中に最終報告書としてまとめられる筈である。
|