研究概要 |
本研究は、親鸞を開祖とする真宗(浄土真宗)の重要な一集団である横曽根門徒(親鸞の高弟である性信に始まる)の中世のありさまを明らかにしようとするものである。研究方法は、まず各地に残る横曽根門徒関係の史料(古文書・古記録・仏像・仏具・絵画・肖像など)を収集し、基本的な史料集を作成して、その上に立って横曽根門徒の歴史を明らかにすることであった。横曽根門徒は、下総国西部と常陸国西部(いずれも茨城県)を中心として各地に展開した。そこで、まず平成元年度は茨城県を中心とした関東地方,二年度は北陸・東海地方を研究対象として調査を行なった。あわせて平成元年度の成果からの課題となっていた他の門徒の調査もすすめてきた。その結果得た新しい知見と成果は次のとおりである。 1.東海地方や北陸地方でも、中世を通じてかなりの横曽根門徒の展開が確認できたこと。さらに,近畿地方でも横曽根門徒が広がっている気配がみえる。今後の課題としたい。 2.横曽根門徒を鎌倉時代後期に保護した幕府の有力者である平頼綱に関して論文をまとめることができたこと。真宗の歴史や信仰は,幕府や朝廷との関係からも考えていかねばならない。 3.常陸国内の有力門徒集団である鹿島門徒と,その祖の順信についても考察を進め,論文をまとめることができた。横曽根門徒の性信も鹿島門徒の順信も,いずれも鹿島神宮の神主の出身といわれていて興味深い。 平成3年度は,従来からの計画に沿って調査研究を進めるとともに,他の門徒集団の研究もすすめ,近い将来に一冊の研究書として出版する予定でいる。書名は『関東における真宗教団の研究』といったものとし、歴史・思想が中心となる。
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