河南・山東・安徽・湖北方面の先秦都市を文献資料・考古資料双方から抽出し整理し、内城・郭壁などの平面的配置、居住区の分布状況、基域の分布状況などを考察した。そこから得られた知見をもとに、江陵陀江寺遺跡に代表される城外異民族の居住形態、内城・外郭の社会的意義、いわゆる邦基と公基の問題、戦国時代成立の新都市と西周以来の旧都市との構造比較などにおいて若干の新見解を得ることができた。またこれらの作業と平行して、先秦都市の典型として鄭・韓の国都鄭韓故城をとりあげ、先秦都市成立・構造・展開のいわば理想型を作る作業をすすめた。 漢代県城の起源については、河南地域のそれらについてほぼ起源探索作業を終了し、その結果全県城の約70パ-セントが起源を戦国時代成立の新都市にもつことが明らかになった。他地域の県城については作業進行中である。 長江流域の都市については、蘇州をその例としてとりあげ、城郭構造・社会経済・文化・住民構成などについて考察をすすめた。その結果、内城・大城の基本構造は已に春秋晩期に形成されていたこと、その後ある時点で外郭壁が城かれたこと、その郭域はおそらく蘇州大城の西部に広がっていたことなどが確認された。また他都市との比較の結果、楚都紀南城・魯都曲阜城と城壁の平面配置において類似点が発見された。 文化・習俗方面においては一都市における二系統以上の文化系統が存在することを確認し--たとえば曲阜城における周系文化と殷系文化、紀南城における楚系文化と巴系文化--、いわゆる被支配諸族の文化がかなり強く残存していることが明らかにされた。
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