研究概要 |
『南史』は唐初の李大師・延寿父子,とりわけ子の李延寿を主たる編纂者として顕慶4年(659)に奏上されたものであるが、その編纂の際、李延寿は、先行する南朝関係の正史『宋書』『南斎書』『梁書』『陳書』を刪約して成立させたといわれる。それは事実だが、かれは先行する4正史によってのみ、『南史』を作成したのではなく、その独自の見識によって、他の史料をとり入れ、混合して成り立たせたわけである。本研究の目的は、その別系統の史料を探求して、『南史』の構成の模様を明らかにすることにあるが、すでに「宋本紀」や「斉本紀」については一応の調査を終えており、さらに「梁本紀」の部分についても、ある程度の予備的研究調査は終えていたので、 1.『北堂書鈔』『初学記』『芸文類聚』『白氏六帖事類集』『太平御覧』『冊府天亀』等の類書などから収集した梁代関係の史料に加え、さらに『文選』『文館詞林』等の文集や、『広孔明集』などの仏教関係史料、さらに『太平広記』等に見られる志怪小説の類まで博く捜査した。 2.その上で『南史』梁本紀と『梁書』とを読み比べ、前者にあって、後者にない部分について、上記1の史料と照合した。 その結果は『冊府元亀』等の類書、『文館詞林』等の文集、また『広孔明集』等の仏教関係史料などにかなり重複するものを見出したが、しかし、残念ながら『南史』編纂の際に用いられた基本的史書を特定するには至らなかった。ただ、李延寿が甚だ志怪小説的記事を重用していることから、そういう系統の史書-たとえば『幽明録』のようなもの-が構成要素として数えられることは問違いあるまい。 つぎは「陳本記」の部分をとりあげたい。
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