研究概要 |
本年度は、筑波大学所蔵『中国方志叢書』のうち山東・山西・河南・河北の合計四百種の華北地方の地方志調査を終了した。また,陝西・江蘇・折江等の二十種以上の地方志を調査し,華南,華中の方志にも元代石刻史料情報が多く含まれている事を確認した。収集した史料は県別に分類整理中であるが,既存の文献史料で未見のものも、いくつか発見した。この調査を通し,地方志の官績志の部分を利用し,ラッケビルツ『元朝人名録』王徳毅『元人伝記資料索引』未収録の地方官を多数発見できた。恐らく,こうした作業を通して元代地方官界をある程度再構成することが可能である。夏の一ヶ月半、中国北京図書館善本閲覧室で、本年出版の『北京図書館蔵中国歴代石刻拓本〓編』元代部分三冊に未収録の所蔵拓本のカ-ド調査を行い、未収録分全ての三九一種の拓本題名と所在地、分類番号等の情報を抄写した。勿論,収録分,未収録分中には既存の文献史料によって既知のものも含まれている。しかし、未知のものも数多いので,文献的情報とのつきあわせが終り次第,目録にして発表する予定である。なお、本年出版された『北京図書館蔵墓誌拓片目録』は,元代部分に関しては不十分な内容である。北京図書館蔵拓片目録カ-ド調査でわかった事は、私が先年調査してきた各地の元代石碑の大部分について、北京図書館には拓本がなく所在目録もないという事である。本研究の重要性が確認できた。一方,『北京図書館蔵中国歴代石刻拓本〓編』元代部分中に、先年実地調査で既に消滅していた元代石碑の拓本が含まれている事も発見した。同書収録の拓本には貴重な情報が多く詳細な研究が必要である。ちなみに、今回、フビライ即位前、彼が開平府を建設した際漢地の神々に対する祭祀を行った史実を伝える拓本史料を発見し総合研究Aの成果報告論文「フビライ朝の祭祀について」執筆の際の重要史料として利用した。
|