研究概要 |
セビ-リャのレパルティミエントを分析して,同地域の大土地所有の形成に関して,以下の知見を得た。 土地の分与には,(1)恵与地(donadios)と(2)世襲地(heredamiento)があり,前者は原則として負担はなく,居住義務も負わず,処分も自由であったが,後者は居住が義務づけられ,一定の間は処分が出来なかった。(1)は王族,貴族,延臣,高級役人,司教,教会,修道院,騎士団に,(2)は一般の入植者に与えられた。一般に(1)の方が規模が大きかったから,ここからレパルティミエントによって大土地所有が生まれたとする学説が有力となった。 しかし史料を具体的に分析すると,穀物畑については15ユガ-ド(1ユガ-ド=約32ha.)以上の大土地所有は所在者数の2.10%,面積の12.40%にすぎず,さほど卓越しているとは言えない。また大土地所有経営の実態を見ると,ムデハル(残留イスラム教徒)追放による労働力不足,小作人・農業労働者の欠如(入植者はすべて土地所有者である),不在地主が多く経営に熱心ではない,地域内の生産物需要(市場)が小さい(人口不足のため)といった諸要因のため,円滑にいっておらず,更に北アフリカからのイスラム教徒の侵入,キリスト教徒の城壁都市内への避難による農村荒廃がこれに追討ちをかけ,行き詰った不在地主は土地の売却・贈与・放棄を余儀なくされた。中小土地所有者も状況は似ており,やはり土地を放棄・売却して帰郷する者が多かった。こうして放棄・売却された土地の特定の人々への集積が大土地所有の起源を成した。 従ってレパルティミエントそのものではなく,むしろその挫折が大土地所有の形成要因であり,時期的にも13世紀中葉ではなく,末に始まったと見るべきである。
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