研究概要 |
13世紀のセビ-リャの全体像を把握するため,以下の3点に関して研究を行なった。 1.地域ー(1)市域(囲壁内区域と郊外区)に関しては,小教区の区分を確定し,(2)周域(市の裁判権の及ぶ範囲)については,その境界を確定し,その変化と内部での領主所領(教会領・世俗貴族領)の形成を,1284年(アルフォンソ10世治世末年)まで明らかにした。 2.再植民ーセビ-リャの人口を,入植したキリスト教徒,残留したイスラム教徒(ムデハル),ユダヤ人に分けて検討した。反乱後のムデハル追放は農村部を中心に人口減少を招き,経済危機(物価騰貴),外敵(北アフリカのイスラム教徒)の侵入を原因とする入植者の帰郷がこれに拍車をかけ,再植民の危機が到来したことを確認した。 3.土地所有ーレパルティミエント(征服地の分配)によって大土地所有が生まれたとする学説が有力であったが,史料を具体的に分析して数字を出してみると,大土地所有がさほど卓越しているとは言えない(土地全体の12.40%)。また大土地所有経営の実態も種々の原因から劣悪であり,行き詰まった地主は土地の売却・贈与・放棄を余儀なくされた。中小土地所有者の状況も似ており,やはり土地を放棄・売却して帰郷する者が多かった。こうして放棄・売却された土地の特定の人々への集積によって大土地所有が生まれた。従ってレパルティミエントそのものではなく,むしろその破綻が大土地所有形成の原因であり,時期的にも13世紀中葉ではなく,末に始まったと見るべきである。 以上の成果を通して見た13世紀のセビ-リャは,イスラム支配からキリスト教徒支配へと移行したものの,まだ充分に安定を見るに至っていない過渡的な混乱の時代であったと特徴づけられよう。
|