押型紋土器の研究は常に縄文文化の起源とともに進めらてきた。押型紋土器の出自の問題を解決するためには、撚糸紋土器との編年的関係を明確にしなければならない。まず、その手がかりを得るため、撚糸紋土器や早朝の沈線紋土器を出土した千葉県香取郡小見川町の城ノ台貝塚の発掘調査を2ヵ年にわたって実施した(1989・1990年度)。本貝塚は1944年に東京大学人類学教室や1949・50年の吉田格氏の発掘調査によって重要な資料を提供するとともに、数少ない縄文時代早期の著名な貝塚の1つである。 今回の発掘調査では、残念ながら押型紋土器は出土しなかったが、撚糸紋土器から子母口式にいたる良好な資料を得ることができた。また、特記すべきは貝層下から2体の早期人骨(田戸下層式)を検出したことである。今回の成果は縄文時代早期の編年学的研究および日本人の起源の解明に寄与するところが大きい。 本年度は2ヵ年にわたる城ノ台貝塚の発掘調査の成果をまとめるため、遺物の整理・分類など報告書作成の作業を行った。まず土器の整理からはじめ、層位別・型式別に遺物を分類し、拓本・断面実測など図版を作成する(約70図版)。石器・骨角器類は実測・トレ-スなどをおこない図版を作成する。あわせて遺構図・層位図を作り、報告書に必要な図版はほぼ揃った。年内には『千葉県城ノ台貝塚調査報告書』として出版を予定している。
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