研究課題/領域番号 |
01510248
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研究機関 | 奈良国立文化財研究所 |
研究代表者 |
巽 淳一郎 奈良国立文化財研究所, 平城京跡発堀調査部, 主任研究官 (10110090)
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研究分担者 |
玉田 芳英 奈良国立文化財研究所, 平城京跡発堀調査部・, 研究員 (90188425)
杉山 洋 奈良国立文化財研究所, 飛鳥資料館, 研究員 (50150066)
肥塚 隆保 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究官 (10099955)
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キーワード | 須恵器 / 産地同定 / 調貢 / 税物容器 / 壺甕 / 平城京 / 平城宮 / 窯跡 |
研究概要 |
本年度は、1 発掘調査報告などから各地の須恵器を集成する作業、2 各地の須恵器の実地調査、3 平成宮・京出土の分類作業を併行して進めた。 1については、西日本はほぼ集成を終え、それをもとに、各地の須恵器を実見し、各地の須恵器の特徴を大略把握することができた。2については、市場に物質を運ぶ運河である堀河出土品を対象とし、分類と実測を行い、1.2の成果をもとに産地の同定を試みた。その結果、予想以上に各地の製品が京に搬入されている事実をつかんだ。平城京に量的に多くを占めるのは、和泉国・美濃国・尾張国・播磨国の産品であり、各国ともに食膳具・注器・貯蔵具の三種が備わる。また、官庁・宮廷のある平城宮内においてもこれらの国の製品が多くを占めており、これらの国は須恵器調貢国とみることができる。 平城宮のゴミ捨て穴から出土する須恵器は、一般的に同一の産地のもので構成されるのに対し、京では産地毎のまとまりはなく、いろいろな産地のもので構成されていることが分かった。また京では、個々の量は、さほどでもないが、壺、甕類が実にバラエテエィに富む。おそらく、それらは、税物容器あるいは市場での交換財として、各地から運ばれたものであろう。これらの壺・甕には漆を入れた痕跡をとどめるものがあり、形は多種多様で前述した調貢国の製品ではない。その多くは、漆を取り出す際にうち欠かれているところから、漆運搬具と考えられる。それらの産地の同定によって、当時の漆調貢国が明らかになる。今のところ、因播・越中国の産と目されるものを見い出しているにすぎず、これらの産地同定は、今後の重要な課題となる。内容物の分からない他の壺甕類についても税物運搬具と考えられ、今後、脂肪酸分析によって内容物の特定をも含めて考えてみたい。
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