平成元年度の研究実施計画は、大きく分けて次の3点を予定していた。 1.『看聞日記』人物索引作成の研究 2.『看聞日記』登載人物の人物考証の研究 3.『康富記』原本(国会図書館本)および古写本(島原文庫本ほか)の紙焼き写真を収集して、史料大成本(活字本)と校合し、本文を整定する。 1.については順調に作業が進み、永享三年までの分(続群書類従本の上巻分)のカ-ドは全部とり終えた。本文とカ-ドを照合しての確認作業も完了している。ただし、僧侶については性別や出自の不明なものもあり、同時代の他の日記を読み比べて特定してゆかなければならない。本作業は次項2.の作業と関連している。 2.の作業については「公家」に関する調査をほぼ完了した。「武家」に関しては、同時代の他の日記、たとえば『建内記』や『康富記』『満済准后日記』『兼宣公記』等を参照して、人物を特定し、その人物の出自や経歴を明らかにする作業を継続している。 3.については、まず島原文庫本『康富記』の写真を入手し、紙焼き写真を利用して、史料大成本と校合しているが、作業は十分には進んでいない。国会図書館本や東大史料編纂所本との詳細な比較、本文整定は、次年度の作業になる。
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