須佐益田家は中世において大内家に関わりを持ち、近世においては毛利家の永代家老として活躍したことにより、その所蔵典籍は約400年間に渡っている。本調査はその活動を文芸面を中心に明らかにしようとしたものである。本年度も昨年度に引き続き従来未整理、未調査であった典籍の研究・調査を行ない、古典籍目録の作成を行なった。6月3日より6月5日迄の調査においては文芸関係の典籍の調査・研究を行ない、9月1日より9月8日までの調査においては文芸関係以外の典籍を中心に調査を行ない、さらに11月3日より11月6日迄の調査においては、それ迄に調査対象から除いていた明治初期の所蔵典籍の調査を行なうとともに点検作業を行なった。書誌調査カ-ド(冊数・書型・T数・成立及び刊年・書肆)は国分学研究資料館作成のものを基本とし、総数956点である。 所蔵傾向の特色はまず第一に他の諸藩の家老所蔵典籍が近世大名成立以降のものであるのに対して、益田家の場合は中世の大内家以来の関連から中世末より近世極初期の所蔵のものが多かった点があげられる。例えば連歌資料及び和歌写本にその傾向がみられ、極めて貴重と思われるものが残存している。また謡本等に古活字本と思われるものも残存している。江戸期においても毛利家の地域文芸面の活動の中核的存在としての活躍もみられる。 古典籍目録の公表は「地域文化研究」第4号に掲載が決定しているがその刊行は1992年秋である。この公表には須佐小学校所蔵の育英館所蔵典籍目録を併せてすることが決まっており、須佐益田家の地域文化史研究のためには共に刊行することが望ましいと考えた。
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