時代ごとに異なるヨハネ黙示録そのものについての解釈、および歴史的・思想的なその影響をさぐる基礎的な段階は、いちおう前年度まででしめくくり、いよいよ本命ともいうべきドイツ現近代文学の具体的な作品を対象に、黙示録の影響を具体的にたどってきた。これ以上の戦線拡大は無理なので、主として19世紀末から20世紀にかけての幾人かの詩人(ゲオルゲ、リルケ、ツェランなど)、および児童文学の作(エンデ、ケストナ-など)を選ぶことにした。詩と児童文学に的を絞ったのは、そこに生死、別世界、戦争など、根源的な問題がもっとも鮮明なかたちで示されていると考えたからである。児童文学の場合など、ドイツ語圏だけの作品では論じられない点が多いので、比較のため同時代の他国の作家(リンドグレ-ン、C.S.ルイスなど)にも向かうことになった。その一端は既に『アルマジロ』誌の「作家とその風土」のシリ-ズに書き、現在もさらに掲載を続行中である。これまでの研究により、黙示録における終末観のとらえ方には、大きく分けて二つの潮流があることが明らかになってきた。そのひとつは、スウェ-デンボルなど神秘思想の流れをくむものであり、他方は、本来の意味でのヘブライ的・キリスト教的な終末観である。後者においては、終末を「一回限り」の歴史の推移のなかで「あれかこれか」の決着を迫る神の出来事としてとらえる。それに対し、前者においては、神秘的な修錬や体験によって永遠を悟れば、ただちに解決がつく問題にすぎない。本年度の学部紀要に全体的なまとめを掲載するつもりで作業をすすめていたが、眼病や各種委員としての活動など公的・私的な事情により執筆が遅れている。次年度の紀要原稿締切が11月末なので、その時期までに仕上げるつもりである。
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