研究概要 |
1.三年計画の第二年度である本年度は、先行研究のうち昨年度中に入手できなかったタイ語のアスペクトとモダリティに関する12の博士論文の精読を行ない、タイ語研究の中でのモダリティ、ム-ド、アスペクトという用語の用法の歴史的変遷をたどり、自分なりの定義づけをあらためて試み、これについてたまたま来日中であったタイ国の言語学者ナワワン・パントメ-タ-女史と意見を交換し有益な知見を得ることができた。実際の分析作業としは、タイ国の国語教科書をカ-ド化することはほぼ完了した。しかし平行して行なってきたコンピュ-タ-・コンコ-ダンスの作成のほうはタイ人学生にタイ語のロ-マ字表記を教えても作成したフロッピ-・ディスクにあまりにもミスが多くて使用できず、また作成に時間と費用がかかりすぎて、小学校4年の教科書まで作成した段階で断念せざるをえなかった。 2.分析の結果得た知見としては次のようなものがある。(1)アスペクトとしては時間の継続を表わすのに従来言われているju:(ーている),paj(ーていく),ma:(ーてくる)の他にwaj(ーておく)があり、特殊な過去の継続を表わすこと、(2)進行を表わす用法のうちkamlang(ーing)とkamalang ・・・ju:(ーing)はほぼ同一の意味に用いられると言われているがカ-ドに取った例文を分析した結果ではこの二つの異なる表現が用いられるコンテクストに明らかな相違があることが分かった。モダリティに関してkho'ng(だろう)とkho'ng ca(だろう)、khwan(べきだ)とkhwan ca(べきだ),a:t(かもしれない)とa:t ca(かもしれない)はタイ人学者がこぞって同一の意味であると言っているが、カ-ドで分布を調査した結果、caのついている形式はより現実的、具体的な事家を表わしていることが判明した。
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