研究概要 |
本研究は、前6ー4世紀のインドにおいて、正統派の宗教であるバラモン教に対抗して抬頭した遍歴の修行者「沙門」(Skt.sramana,Pkt.samana)の実態を、その基盤となった社会と、思想史的背景とから解明し、彼らが仏教やジャイナ教を成立せしめた諸条件を考究することを目的とする。 これらの修行者の実態解明の手掛かりを得るため、仏教とジャイナ教の古層の聖典:〔仏教〕=『スッタニパ-タ』(経集)、『ダンマパダ』(法句経):〔ジャイナ教〕=『ア-ヤ-ランガ・スッタ』『ス-ヤガダンガ・スッタ』『ダサヴェ-ヤ-リヤ・スッタ』『ウッタラッジャ-ヤ-』『イシバ-シヤ-イム』を研究対象として進めた。 1.これら古層聖典の翻訳ノ-トを使用しやすくするために、より完全なものに作成し直した。 2.研究課題の研究史を検討し、従来の学説を整理して問題点を明らかにした。 3.新しい視点から研究を進めるにあたって、必要な資料の蒐集と整理を行った。整理に当たってはカ-ド化の作業も併せて行った。 4.研究領域の近い研究者と緊密な情報交換を行ない、研究の方向付けを行った。 仏典の中には上記の聖典以外にも古層に属すると見做されているものもあり、これらの作品やウパニシャッドの文献をより有効に使用していくならば、残された解決すべき点も今後解明されるものと考えられる。
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