申請者は、「法の解明に際しての隣接諸科学の批判的受容」のテ-マの下に、平成元年度にこれを大脳生理学、生物学の見地から考察しました(この成果は「価値現象の捉え方ー進化論から考えるー」(高岡法学第1巻1号に掲載)。これに引続き、本年度(平成2年度)は、同テ-マを比較動物行動学、社会生物学の見地から考察することを試みました。この成果の一部は、後欄に記載した「人間的価値と法ー比較動物行動学・社会生物学の成果を批判的に受容してー」(高岡法学第2巻1号、印刷中)の論文として表されますが、その概要は以下の通りです。 これは、人間の価値意識と価値的行動に、動物と通じた、生物としての拘束された現れが在るか否かを求めるものであり、動物の行動とその社会現象に、いかなる意味での「価値的」行動が観られるか、またそれを「価値的」行動とすれば、その起源と構造は如何なるものであり、動物としてのヒトの行動とその社会に、いかに連続的に観られ得るものかを考えたものです。申請者はここで、特殊、人間のみが創りあげると従来言われてきた文化の中にも、動物の行動と社会に於ける「価値的」現象との連続性とその埋没性が秘められていることを論じています。またそれと共に人間に於ける価値的行動が、動物のそれと、いかに、またどのような意味で異なるものであるかを論じ、人間が身体構造と心理構造が、その基礎を動物性の上に置きつつも、動物性を意志的に抑制し制御し、動物に於ける「価値的」現象の基であるものを文化として組み入れることを認め論じています。
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