1.研究補助金交付の対象に決定したという通知を受けたのが平成元年(1989年)の11月中旬であり、研究を2年間に短縮して完成するよう補助金の面で制限されたため、計画全般にわたって変更せざるを得なくなった。上記の事情のもとで、当該年度および次年度において、申請の研究計画三時期三区分を変更して、(1)朝鮮高等法院判決録等に登載された判例の収集と分析、(2)日本国の大審院判決録等に登載された判例の収集と分析、に区分して同時的に一括して進めることとした。そこで基本資料である『朝鮮高等法院判決録』をもとめて、1990年2月、3月に二回にわたり、最高裁判所図書館、法務図書館、国立国会図書館、東京大学図書館、アジア経済研究所資料室等を徹底して調査したところ、全30巻刊行されているといわれる『朝鮮高等法院判決録』のうち一般に公開されているものは、第17巻(昭和5年)、第18巻(昭和6年)、第20巻(昭和8年)、第29巻(昭和17年)のみであることが判明した。朝鮮高等法院の判例を収集し分析することなくしては、本研究の価値はまったく損なわれてしまうので、次年度にさらに国内の主要図書館を調査した結果、もし上記資料の所在が不明であるとすれば、大韓民国最高法院図書館等を訪ねこれを収集するしか外に手段はないであろう。即ち、申請した研究計画の一部を変更して、国外において資料収集することもありうることを現時点で申し述べておきたい。 2.このような経緯から、本年度は極めて不十分な資料収集に留どまったため、本研究補助金で購入した『朝鮮統治史料』全10巻等に対する内容の分析と研究は、次年度から着手したい。ただ上記の資料収集の過程で、秘密資料『思想彙報』(朝鮮高等検事局思想部)、『思想月報』等を閲覧して、これらに収録されている《朝鮮地方法院》の判例を断片的ではあるが多数収集できたことも併せて報告する。
|