1.本年度の主たる研究作業 前年度からの研究のとりまとめのために焦点を絞って行った作業と、新たに資料を蒐集しながら対象を拡大して行った研究作業とに分かれる。 (1)前者に属するのは、自ら編集責任者として刊行した『フランス人権宣言と社会主義』(日本評論社、1989年)のうちの執筆担当部分(第一章「フランス人権宣言と社会主義思想」)の研究作業である。そこでは、自由・平等(民主主義)の把握に焦点をおいて、第一に、初期社会主義思想におけるフランス革命の自由・平等・友愛理念の継承を検討したのち、その社会主義的批判思想、すなわちマルクスの体系的市民社会批判と共産主義思想、プル-ドンとバク-ニンの(それぞれに個性的なアナキズムおよびラサ-ルの「国家社会主義」における自由・平等問題把握の対抗関係を分析するとともに、第二に、19世紀末におけるドイツ社会民主党内の修正主義論争およびロシア・ナロ-ドニキ主義における社会民主主義の問題の検討を行った。 (2)新たに資料を蒐集しつつ研究を進めたのは、ロシアの革命運動の中でのナロ-ドニキ主義の諸潮流およびマルクス主義の諸潮流における自由・権利思想であり、これをロシア革命において主導的地位を占めるにいたるレ-ニン主義につなげ又分析する作業である。これは、今日のソ連における「ペレストロイカ」の思想を検討する上でアクチュアルな意味をもってきている。 2.今後の研究および研究とりまとめの計画 (1)前記1-(2)の研究とこの主題にかんする従来の業績とを合わせて、独立の論文(著書)を完成させる。 (2)前記1-(1)の研究を、フランス革命における「自由」概念の歴史的分析などを含めて補充する。
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