研究概要 |
(1)近代イギリスの出発点である17世紀の近代市民革命の議会と政府の関係について、これまで考察してきたが、今年度は1649年から1660年までの共和制期(Commanwealth)に重点を置いて、実証研究を行った。この時期には現在の内閣のいわば原型である議会委員会が執行府として活動しはじめているので、その活動について、昨年度の料学研究費補助交付金によって購入した史料、とくに『空位期の法律と命令』や当時の議会の議事録・政府刊行物などの第一次史料を読み・分析した。その研究実績の一つとして『イギリス共和制期の政府と議会についての関係年表』の作成にまずとりくみ、諸法律・命令などを「デ-タベ-ス」化して、一覧・検索などが可能なように工夫した。(2)イギリスの研究文献を読み、整理・検討した。今年度のこの作業の成果の一部分として現代憲法学の関連文献を訳出したが、その当面の成果が、Jowell & Oliver,Changing Constitution,1985に所収されたColin Turpin,ministerial Responsibility;Myths or Reality,の訳稿である。その訳稿は『鹿児島大学社会科学雑誌』12号〔1989年9月〕に(上)が、13号〔1990年9月〕に(下)が発表された。そこではダイシ-以来の憲法伝統とされてきたイギリスの大臣責任制にも大きな変化がおきていることが指摘されている。(3)市民革命期の検討をふまえて、18世紀の「各誉革命体制確立期」へと歩をすすめ、内閣の制度的確立と展開を追った。とくにイギリス内閣史の古典的な著作であるM、T、Blauvelt,The Development of Cabinet government in England,1902,Londonを翻訳し、当時の議会と内閣の対抗と均衡を検討した。
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