本研究では、重点課題として、ヴァイマル憲法下のシュミットの制度保障理論とボン基本法下のヘ-ベルレの制度的基本権理論を検討し、両者の理論と特質と相互の関係ならびに憲法解釈上の問題点を解明することとしていた。 本研究により明らかになったのは、つぎの事柄である。 1 本来の制度的法思考にあって決定的に重要なのは、法規範を「制度の内在的意味連関や法秩序全体のなかでの制度の位置」から理解することである。 2 ヘ-ベルレの制度的基本権理論にあっては、すべての基本権からその制度的側面を引き出す新しい基本権解釈によって、「制度としての基本権」、すなわち主観的自由権の客観的法への解消という制度的法思考本来の帰結が導き出されている。 3 シュミットの制度保障・制度的保障理論は、それ自体としては法の把握についての方法上の原則的視点を含むものではない。しかし、シュミットは、制度的保障とされるもののなかの限定されたものについてであるにせよ、主観的権利の客観的法への解消を要求しており、この点に制度的法思考本来の意図の明示的な表明が認めるられる。 4 かくして、制度的基本権理論はもとより、制度保障・制度的保障理論についても、「制度」概念そのものの輪郭と「保障」の範囲の不明確性を媒介として、基本権を空洞化する理論となり、ひいては自由の国定化に行きつく危険性がつねに存在している。
|