研究課題/領域番号 |
01520019
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林屋 礼二 東北大学, 法学部, 教授 (90004168)
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研究分担者 |
三條 秀夫 東北学院大学, 教養部, 助教授 (80196336)
山本 和彦 東北大学, 法学部, 助教授 (40174784)
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キーワード | 民事執行法 / 不動産執行 / 不動産競売 / 強制執行 / 実態調査 / 不動産登記簿 |
研究概要 |
平成3年度は、東京・仙台・福島・青森各地裁における不動産執行事件の記録調査対象物件中、一部(主として都市部所在の物件)を抽出して、不動産登記簿による追跡調査を行なった。 (1)不動産競売について得られた知見は、以下3点にまとめられる。(1)競売売却(配当・弁済金交付)で完結した事件については、各地域とも競落後に物件が転売される傾向が見受けられる(この傾向が最も強い東京での所有権移転率は96.7%、最も弱い福島でも58.3%)。したがって、競落人の多くは一般の市民ではなく、転売目的の中間業者であることが推測される。ただし、転売回数をも併せて詳細に見れば、福島・青森では、競落人の自己使用を推測させる転売なしのケ-スもある程度存在する。(2)取下げにより終結した事件(僅かながら取消決定により終結したものも含む)については、東京・仙台では事件終結に前後して任意売却される傾向が顕著なのに対し(東京での所有権移転率は87.9%)、福島・青森では任意売却を伴わないケ-スが相当あり(青森での所有権移転率は39.3%)、それらは抵当権者のあきらめによる事件取下げかと推測される。(3)上記(1)(2)に共通して、民事執行制度の運営に一定の中間業者の関与する場面がかなり多いことが推測されるが、彼らは旧法時代のいわゆるブロ-カ-とは形態を異にするものと思われる。したがって、特に不動産をめぐる権利関係の錯雑する大都市においては、これらの業者を健全に育成することで競売市場を一般市民に間接的に解放してゆくことの可能性も示唆される。 (2)不動産強制競売について得られた知見は、以下のとおりである。強制競売においては、従来、間接強制的な機能が指摘されてきたが、本調査によれば所有権移転率はかなり高い。ただし、その原因は、専ら同一不動産上に設定された抵当権の被担保債権の不履行にあると考えられる。他方、強制競売申立ての取下げに際し、差押債権者が登記抹消料名義の下に抵当権者から債権回収を図る方途のあることも推測される。
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