本年は、昨年行なったアンケ-ト調査やデ-タ分析をベ-スに、直接投資のメカニズムやその経済的影響について、より突っ込んだ経済分析を行なった。その詳細については別添の報告書を参照してほしいが、研究の基本的な成果は次のようにな形でまとめることができる。第一に、海外直接投資とはいっても、国内で行なわれる投資と基本的に同じメカニズムで動いている。したがって産業構造(競争形態、集中度など)や企業の生産構造(垂直統合の程度など)、製品の性格などが、重要な決定要因となる。その意味で直接投資はきわめて「産業組織的」現象である。我々の研究では、この点を確認するだけでなく、それが具体的に産業や企業規模などにどのようにあらわれているかを堀り下げて分析した。アンケ-ト調査は、この意味で有益であった。第二に、海外直接投資の進展は、貿易や国際資金移動など他の国際経済取引にも大きな影響を及ぼしていることを分析した。具体的には、企業内貿易の拡大、資金調達・運用の国際展開である。ある意味では、直接投資が国際経済取引の拡大と深化のドライビングフォ-スになっていると言ってよいだろう。この点は、直接投資が貿易摩擦問題に対する消極的な対応であるという見方と対照的なものである。貿易と直接投資の関係について分析することは国際経済取引のメカニズムについて理解する上で重要な作業である。我々の研究でもこの点について考察を行なっているが今後に残された研究課題も少なくない。
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