平成元年度に始められた本研究では、まず元年度内に、国内におけるデ-タの収集・整理を行ってきた。加えて、5月には、米国のロチェスタ-大学での国際会議で研究交換と討論を行ない、6月から7月にかけて来日した何人かのアメリカ人研究者とはデ-タ及び技術的な意見交換を通じて研究の発展を促すことが出来た。出生率の経済分析において、世界的なパイオニアといえるシカゴ大学のベッカ-、南カリフォルニア大学のイ-スタリンとは手紙での意見交換をし、5月にはイ-スタリン教授と直接会って議論することができた。 デ-タの収集も基本的な部分は終わり、日本及び米国の歴史的な出生率変動、また、先進国と発展途上国の出生率の差についての現状についてもほぼつかむことができた。平成2年度の1月には、骨格となるモデルの作成も終えている。4月以降、新年度においては、経済モデルをより完全なものとして、そこで検討する結果と現実のデ-タとの対応関係を吟味するつもりである。 現在までの研究実績は、今後の研究の進むべき方向を予測させるに十分なものがある。まず、イ-スタリン仮説、すなわち出生率が振動的に変動する傾向の説明を行なうことである。過去のデ-タに照らしてその意味はある程度つかめてきたので、より明確な説明ができるなら将来の出生率の予測につながるであろう。第2に実質所得と出生率について、比例的あるいは反比例的な関係の存在を立証することである。これは多くの学者がこれまで様々な議論を交わしてきた問題である。これまでの経過は、以上の2点についてかなりの成果を期待するに十分なものである。
|