情報財の取引制度(知的所有権制度)の経済学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01530004
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 鬼木 甫 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (40107107)
• キーワード: 知的所有権 / 情報財 / 複製(コピ-) / 特許 / ソフトウェア / 著作権 / 工業所有権

研究概要

1)理論モデルの作成ーー情報財の生産・取引・使用を説明するため、取引に参加する3種類の経済主体、(i)情報の原生産者、(ii)情報の複製者、(iii)情報財の使用者について、それぞれの行動を説明するためのモデルを作成した。この段階では、情報所有権保護のための制度(保護の範囲と程度、罰則等)は与えられたものと考えた。情報の原生産者は、情報生産技術と複製防止技術のもとで、情報財販売から得られる収入と情報生産費用・複製防止費用の差を最大化するものと考えた。情報複製者は、複製された情報(2次情報)の販売収入と、複製費用(原情報の複製防止策を無効にするための費用を含む)の差を最大化するものと考えた。また、情報使用者は、原情報あるいは2次情報の購入から得られる利益と購入費用の差を最大化するものとした。これらの経済主体が参加する市場で決まる原情報・2次情報の均衡生産量および価格を、社会的に最適な生産者・価格と比較した。任意に与えられた保護制度のもとでは、情報財の均衡生産量と最適生産者とは一致しないことが期待明らかになった。
2)実証分析ーー少数種類の情報財について、上記理論モデル中の変数に対応する統計デ-タを収集し、理論モデルに含まれる諸パラメタ値を推計した。分析対象としては、パ-ソナルコンピュ-タ-およびコンピュ-タソフトウェアを選んだ。ただし、パ-ソナルコンピュ-タについては、IBMーPCを原情報財、その模倣品(コンパチブル製品)を2次情報財とし、またソフトウェアについては、ソフトウェア・メ-カ-のオリジナル・プログラムを原情報財とし、そのコピ-を2次情報財と考えた。

研究成果

• [文献書誌] 鬼木甫: "“Total and Partial Factor Productivity Analysis of Nippon Telegraph and Telephone Company:1971ー1987" Paper presented at the Workshop on Telecommunications Infrastruc ture and Investment in ASEAN,Singapore,May 15ー16,1989,and at the Conference on Current Issues in Productivity, Rutgers:the State University of New Jersey,Newark,U.S.A.,December 6ー8,1989.
• [文献書誌] 鬼木甫: "“Modeling of Intellectual Property Rights"" The Economics of Intellectual Property in a World Without Protiners.by M.Jussawalla and H.Oniki(forthcoming).
• [文献書誌] 鬼木甫: "「NTTの生産性ー民営化後NTTの経営体質は変わったか?」" 『テレメディア』. 9. 49-53 (1989)
• [文献書誌] 鬼木甫: "「新しい情報通信技術と産業連関分析」" 『イノベ-ション&IーOテクニ-ク』. 1(1). 30-39 (1989)