本研究は、ケインズ以後のケンブリッジ経済学のオリジナリティを捻証することを目的としている。代表者宮崎義一は、ケインズにみられるヴィジョンに焦点をあて、その経済学の奥にひそむ社会哲学と道徳哲学の領域を解明する作業を担当した。それは、近く刊行される『J.M.ケインズ』の内に発表される予定である。 研究分担者(宮崎耕一)の研究実績は次の如くである。 N.Kaldor(1956)はその定常成長モデルにおいて、資本家と労働者の間で異なった貯蓄関数を許容することに成功した。パシネッティ・モデルは、そのモデルを更に洗練化したとのことである。以上はイギリスケンブリッジ学脈を代表する成長モデルである。これに対して、アメリカのMITにはソロ-・タイプの定常成長モデルがあり、すでにそれぞれ「パシネッティ・ケ-ス」と「反パシネッティ・ケ-ス」と命名されてきた。 その後問題となったのは、これら2つのケ-スのうち、いずれが一般的であるかという点であった。M.Barangini氏は、パシネッシィ・ケ-スの方が、反パシネッティ・ケ-スを部分として包摂すると主張し注目された。宮崎耕一(分担者)の研究は、このBaranginiの研究の中に重要な誤りがあるとし、それを正すことを目的とするものである。その結論は、パシネッティ・ケ-スに包摂されず、独自に「反パシネッティ・ケ-ス」が存在しうることを、理論的に証明したのである。この研究は、P.A.Samuelsonによって評価され、この推選によって、Oxford Economic Papersに近く発表される予定である。この研究によってケンブリッジ学脈の成長モデルの成立する条件がより一掃クリアにされることと考える。またそれは有名なケンブリッジ方程式(π=1/s_0gn)均衡利潤率(π)、資本家の貯蓄性向(S_c)、自然成長率(gn)と置くが成立ための条件を明らかにすることにもなる。
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