研究概要 |
平成元年度の研究結果より独立及び正規性の仮定下に於ける平均の変化時点発見についてはTakahashi(1987)の推定量をWoodroofe(1986)の展開の中心に据える事により,Woodroofeの漸近展開の改良が得られる.そこでSiegmundの方法より簡単な期待標本数及び過誤確率の二次の項までの漸近展開が可能である事が判った.この方法によれば独立性の仮定を取り除いた場合にも(具体的にはAR(1)を先ず想定しているが)Takahashi(1987,1990)と類似の結果が得られると考えられることより本年度はこの方向で研究を進める事とした。しかしながら我々の最終目標が切断された停止時刻の下での分析である事より本年度は(独立な正規分布の仮定下で)Takahashi(1987,1990)の方法を切断された停止時刻の期待値とその時点までのデ-タにもとずく標本平均の期待値の高次の漸近展開を先ず求めた(Takahashi 1991)。ここで求められた結果は基本的にはTakahashi(1987)で開発された方法を用いてはいるが,問題の性格上より複雑な計算に基づいている。ここではいわゆる"Curved Boundary Crossing Problem"における結果が求められているが,実は"Straight line Boundary Crossing"の場合ですらこの手の結果は末だに求められていなかった。その意味に於いて本年度は実り多い年であった。 一方株価収益率等の金融時系列分析に於いては最近の多くの実証研究の結果,その平均値はほぼゼロで有る事が示されてきている,従ってここではむしろ分散の変化及び推定が重要である.それ故来年度では分散の変化時点の発見及び分散値の推定にも重きを置くべきと判断した.そこで今年度は分散変化の発見の為のCusum検定の導出及び分散変化を含むモデルに於ける平均の(構造的)変化を発見する検定法についていくつかの結果を得た。しかしながらそれ以上の新たな知見はまだ得られていない。
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